海外情報

海外インテリアデザイナーが実践するVectorworksワークフロー——プレゼンから施工図まで一気通貫で管理する方法

海外のインテリアデザイン事務所では、Vectorworksを1つのファイルで全工程を管理するスタイルが一般的です。コンセプト検討から実施図面、施工管理まで、ファイルを分割せず一元管理する「一気通貫ワークフロー」です。住宅・店舗の内装設計・施工に携わる立場から、この考え方のどこが取り入れられて、どこが日本の実務と合わないかを整理してみます。

1ファイルで全工程を管理するという考え方

海外の事務所が1モデルファイルで全工程を管理するのは、「ファイルを分けると情報が分散する」という実務上の反省から来ています。プレゼン用ファイルと施工図ファイルが別になると、片方を修正したときにもう片方への反映漏れが起きます。壁の位置が変わったのに施工図の展開図がそのまま——という事態は、ファイルが分散していると必ず起きます。

1ファイルで管理する場合、情報の分断がなくなるかわりに、ファイル内の「整理術」が問われます。その整理術がVectorworksのClass・Viewport・Sheet Layerです。この3つを使いこなすかどうかが、1ファイル管理の成否を分けます。

Viewport・Sheet Layer・Class でバリエーションを管理

海外のワークフローで一般的な構造は次の通りです。

Class(クラス)で情報の種類を分ける:プレゼン用デザイン情報・実施図面用の寸法・施工指示の注記……これらを別クラスに入れておきます。クラス単位で表示/非表示を切り替えられるため、「今どこまでの情報を見せるか」を柔軟に制御できます。

Sheet Layer(シートレイヤ)で出力バリエーションを作る:「クライアント向けプレゼン資料」「施工会社向け実施図面」「照明業者向け天井伏図」——それぞれのシートレイヤを用意し、ビューポートで表示するクラスを制御します。同じデザインレイヤのモデルが、複数のシートレイヤで異なる「顔」を持つ形です。

Viewport で「見せる情報」を切り替える:同じデザインレイヤのモデルを、ビューポートごとに表示クラスを変えて別の図面として出力します。プレゼン用には仕上げイメージ、施工図用には寸法と注記——モデルは1つ、アウトプットは複数です。

プレゼン段階から施工図まで、一気通貫の流れ

コンセプト・マテリアルボード段階:モデルにマテリアルとテクスチャを設定し、Renderworksでプレゼンビジュアルを生成します。この段階でクラス分けを済ませておくのがポイントで、後工程での可視性制御が楽になります。「プレゼン時にクラスを整理すればいい」と後回しにすると、実施図面段階で大規模な整理が必要になります。

実施図面段階:コンセプト段階のモデルをそのまま使い、寸法・注記クラスを追加します。シートレイヤに各種図面(平面図・展開図・天井伏図)を配置し、A1・A3などの縮尺を設定します。プレゼン用と実施図面でモデルを分けないため、デザインの修正が即座に図面に反映されます。

施工管理段階:施工業者から指摘を受けた変更を同じ1ファイルで管理します。図面のバージョン管理にRevision Cloud(修正マーカー)を使う事務所も多く、どこが変更されたかを図面上で明示する方法が一般的です。

BIMとの境界線——Space ObjectとIFC出力の活用

Vectorworksは完全なBIMツールではありませんが、BIM的な使い方ができます。Space Object(空間オブジェクト)を使うと、部屋ごとの面積・名称を自動管理でき、面積表も自動生成されます。IFC出力を使えば、建築確認申請の電子化対応や、ゼネコン・設備業者との連携が可能です。

海外の住宅・商業インテリア案件では、これらのBIM機能を部分的に活用しながら、完全なBIMではなく「BIM的な使い方」をしている事務所が多い印象です。Space Objectによる面積管理は即実践できる機能なので、大きめの案件から試してみる価値があります。

日本の実務との違い——取り入れたいこと、合わないこと

取り入れたい点
1ファイル管理の徹底はすぐ実践できます。現在は案件によってプレゼン用・施工図用でファイルを分けていますが、Classの管理を徹底すれば1ファイルで運用できるはずです。Sheet Layerのバリエーション活用も、出力のたびに設定を変える手間を省けるので取り入れたい。デザイン変更が施工図に自動反映される仕組みは、住宅・店舗のような変更が多い案件ほど恩恵が大きいです。

日本の実務と合わない点
IFCや高度なBIM連携は、現状の取引先(工務店・内装業者)との間ではまだ実用的ではありません。先方の受け取り環境が整っていないため、PDFとDXFが主流のまま。また、日本の内装業界では元請けと下請けでソフトが違うことも多く、ファイル共有ベースのワークフローが成立しない場面があります。海外の事務所間のようにVectorworksファイルをそのまま共有する運用は、国内では限定的です。

もう一点、海外の事務所は1案件を1チームが完結させるケースが多いですが、日本では設計・施工が分離している場合(設計事務所と施工会社が別)も多く、図面の受け渡し形式が変わります。その場合は結果的にDXFやPDFでの納品になり、1ファイル管理のメリットが活かしきれない面があります。

まとめ

海外のVectorworksワークフローから学べる最大のポイントは「1ファイルで情報を分散させない」という思想です。Class・Viewport・Sheet Layerを使いこなすことで、同じモデルから用途別の図面を効率的に出力できます。BIM連携や高度な機能は現場の取引先環境次第ですが、ファイル構造の整理だけで日常の作図効率は大きく変わります。今日から取り組める一歩として、案件のクラス設計を見直すところから始めてみてください。

関連記事:Vectorworksのクラスとレイヤーをゼロから設計する / クラスの命名規則を実務で見直す方法 / シートレイヤと図面書き出しの印刷設定

内装設計・施工に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせはこちら →