Vectorworksで2D図面を長く使ってきた内装設計者にとって、3Dモデリングの最初の壁は「頭の切り替え」だ。2DCADでは「平面上に線を引く」だけで完結するが、3Dでは「どの平面に、どの方向に、どこから形を作るか」を常に意識しなければならない。この記事では、内装設計者が最初に覚えるべき3つの操作——押し出し・回転体・作業平面——を実務的な文脈で解説する。
2DCADと3Dモデリングの頭の切り替え方
2DCADでは、全ての線は「XY平面(俯瞰面)」に存在する。奥行き(Z軸)は考えない。
3Dモデリングでは、XY・YZ・XZの3つの平面が存在し、どの平面に図形を描くかによって最終的な形が変わる。Vectorworksでは、描画する平面を「作業平面(Working Plane)」として切り替えながら作業する。これが2Dからの移行で最も理解が必要な概念だ。
実務での感覚としては、「床に図面を描く感覚」が2D、「床・壁・天井のそれぞれの面に図形を貼り付けていく感覚」が3Dのイメージに近い。
作業平面(Working Plane)の概念と設定方法
作業平面とは「今どの面に描いているか」を定義する仮想の平面だ。Vectorworksでは3Dモデリング中に作業平面を随時切り替えながら作業する。
デフォルトの作業平面
Vectorworksを3Dモードにすると、デフォルト作業平面は「地面(XY平面)」になっている。この状態で図形を描くと、床面に置かれた図形として扱われる。壁の仕上げを描きたい場合や、天井面に図形を描きたい場合は作業平面を変更する必要がある。
作業平面の変更方法
ツールバーの「作業平面の設定」から選択するか、「作業平面ツール」を使って任意の面に作業平面をスナップさせる。既存の3Dオブジェクトの面に作業平面を貼り付けると、その面上に図形が描けるようになる。
- 床面に何か置く → 作業平面:地面(XY平面)のまま
- 壁面に飾りを描く → 壁の面に作業平面をスナップ
- 斜め面にエンブレムを描く → 任意の面に作業平面を合わせる
押し出し(Extrude)——3Dの基本操作
押し出しはVectorworks 3Dの最も基本的な操作だ。2Dの図形(閉じたポリゴン)を選択して「モデル」→「押し出し」を選ぶと、その図形が指定した高さ分だけ立体化される。
内装設計での押し出し活用例
カウンター・棚・腰壁などは押し出しで簡単に作れる。
- カウンター:平面図のカウンター輪郭(長方形)を選択 → 押し出し → 高さ850mm → 完成
- 棚板:厚さ30mm程度の長方形を押し出してシンボル化し、棚段ごとに複製して配置
- 腰壁:壁の断面形状を作業平面上で描き → 押し出しで奥行きを付ける
押し出した後にオブジェクト情報パレットで「押し出し量」を変更できるので、寸法を後から調整しやすい。
回転体(Shell / 回転押し出し)
円柱・円錐・ドーム形状など、軸を中心に回転させた形状を作るには「回転押し出し」を使う。メニューの「モデル」→「回転体」から操作できる。
内装設計では、円形の柱・丸みを帯びたカウンターエンド・コーナーキャビネットの角部分などに使える。複雑な形状は難しいが、回転軸を決めて断面形状を描くだけで球・楕円・トーラス状の形が作れる。
内装設計者がよく使う3Dコマンド
押し出し・回転体の次に覚えておくと便利なコマンドをまとめる。
- シェル(Shell):3Dソリッドの外側に一定の厚みをつけて「殻」を作る。木箱・ケース・薄い板金形状に使う
- ブーリアン演算(加算・減算・交差):複数のソリッドを足したり、引いたり、共通部分だけ残したりする。開口部を開けたボックスや複合形状の作成に使う
- パスに沿った押し出し(Extrude Along Path):曲線に沿って断面形状を押し出す。曲面壁・アーチ・モールディングの作成に向く
失敗談——作業平面を変えずに3D図形を作ろうとした話
3Dモデリングを始めたばかりのころ、壁面に額縁状の飾りを作ろうとして図形を描いたが、なぜか床面に張り付いてしまった。壁に向かって描いているつもりが、作業平面がXY(床面)のままだったため、すべての図形が床に描かれていたのだ。
視点を変えて確認すれば気づけたのに、正面から見たままで「なぜ壁に乗らないのか」を延々と悩んでいた。Vectorworksの3D編集では「今どの作業平面にいるか」を常に意識して、定期的に視点を変えて確認する習慣が不可欠だと身にしみた。
現在は、3D操作前に必ず「作業平面パレット」でアクティブな平面を確認するルールにしている。正面・背面・左右・上などの標準ビューへのショートカットキーを覚えておくと、確認の手間が一気に減る。
まとめ——3D入門の最初の一歩
Vectorworks 3Dは、最初の概念(作業平面)を理解すれば、押し出し・回転体だけでもかなりのものが作れる。複雑なモデリングに進む前に、シンプルな什器や家具を押し出しで作る練習から始めると、頭の切り替えがスムーズになる。
- 3Dの最重要概念は「作業平面」——どの面に描くかを常に意識する
- 押し出しは「閉じた2D図形」を選択してモデル→押し出しで実行
- 回転体は軸を決めた断面形状の回転で球・円柱形状を作る
- ブーリアン演算で形状の加算・減算ができる(開口部や複合形状に使う)
- 作業中は定期的に視点を変えて確認する——正面から見続けると作業平面のズレに気づけない
関連記事:Vectorworks 2026 Update 4のフェージング機能 / シートレイヤと図面書き出しの印刷設定 / Vectorworks 2026の内装設計向け4大アップグレード