Vectorworks公式Newsroomが発表した「4 Interior Design Trends for 2026」では、今後の内装設計を方向づける4つのテーマが取り上げられています。フレキシブルスペース、サステナビリティ、Embodied Carbon(体化炭素)の可視化、バイオフィリックデザイン——どれも数年前から話題になってきたトピックですが、2026年時点では「対応するかどうかの選択肢」から「設計の標準的な考慮事項」へと移行しつつあります。国内の内装案件で実際に直面してきた状況と照らし合わせながら、それぞれの実務への影響を整理します。
元記事について
今回紹介するのはVectorworks, Inc.の公式Newsroomに掲載された記事「4 Interior Design Trends for 2026」です。内装設計者向けに2026年の主要トレンドを解説したもので、テクノロジー導入の話ではなく設計思想の変化を扱っている点が特徴的です。脱炭素・自然との接続・空間の柔軟性という共通軸が4つのトレンドの根底にあります。
注目の4トレンド
① フレキシブルスペース
コロナ禍以降、住宅でも商業施設でも「1つの空間が複数の用途を担う」設計が求められるようになりました。元記事では可動間仕切り・モジュール家具・収納計画を統合したアプローチが紹介されています。会議室がラウンジに転換できる設計、リビングが在宅ワーク空間にもなる住宅——こうした可変性が、付加価値ではなく基本仕様として求められるフェーズに入っています。
② サステナビリティ
素材選定・長寿命化・省エネ性能が設計提案の一部になりつつあります。クライアントから明示的に求められるケースも増え、法規制への後追い対応ではなく、提案段階でサステナビリティを積極的に盛り込む姿勢が設計者に問われています。
③ Embodied Carbon(体化炭素)の可視化
仕上げ材・家具・設備機器が持つ製造・輸送段階のCO2排出量を設計段階で数値化し、素材選定の根拠にする動きが海外では進んでいます。Vectorworks ArchitectのSustainability Dashboardは、設計モデルから自動的にデータを集計してEmbodied Carbonをリアルタイムで算出する機能を持っています。元記事では「FF&Eの選択が建物全体のカーボンプロファイルに直接影響する」と指摘しており、内装設計者が脱炭素の担い手になりつつあることを示しています。
④ バイオフィリックデザイン
「自然との接続」を意図的に設計に組み込む考え方です。採光計画・植栽・自然素材の使用が装飾の延長ではなく、居住者の健康・生産性・幸福感に関わる設計要素として位置づけられています。元記事では「屋内と屋外の境界を曖昧にする」という表現を使っており、材料の選択から窓の配置まで、バイオフィリックな視点で設計全体を捉え直すことが求められています。
日本の内装実務への落とし込み
フレキシブルスペースは「電源と照明計画」から始まる
国内では特に住宅・SOHOの設計で可変性への要求が増えています。問題は、家具の配置変更を想定したつもりでも、コンセント位置・照明回路が固定されているために「実際には変えられない」空間になりがちなこと。筆者が手がけた案件でも、後から「ここに作業スペースを移したい」という話が出て、延長コードで対処するしかなかったケースがあります。フレキシブルスペースの設計は、内装の仕上げより先に設備・電気計画の自由度を確保することが前提です。
Embodied Carbonは国内でも2〜3年以内に実務要件になる
国内ではZEB・ZEHの評価が先行しており、内装材のLCA(ライフサイクルアセスメント)まで踏み込んだ検討はまだ一般的ではありません。ただし大手デベロッパーや商業施設の内装案件では、ESG観点での素材選定基準が設計者に求められるケースが増え始めています。Vectorworks ArchitectのSustainability Dashboardが実務でどう使えるかを今から把握しておくことは、この波への準備として価値があります。
バイオフィリックは「植栽を置く」の先へ
国内店舗でも「緑を置く」レベルから、採光・換気・自然素材を統合した設計への進化が起きています。ホテルやオフィスのリノベーション案件で特に意識されるようになっており、設計提案書にバイオフィリックデザインの視点を盛り込むことが差別化になるケースが出てきています。ポイントは「自然素材を使う」という素材論ではなく、「自然光・外気・緑視率をどう空間に取り込むか」という体験設計の視点です。
まとめ
2026年のインテリアデザイントレンドは、個別のデザインスタイルではなく「設計判断の軸足の変化」を示しています。脱炭素・フレキシブル・自然との接続——これらは今後の案件で「提案できるかどうか」を問われる領域です。Vectorworksはこれらのトレンドに対応するツールをすでに搭載しており、日常ソフトウェアとして使い続けている設計者にとっては、すぐに実務へ応用できる状態にあります。
情報源: 4 Interior Design Trends for 2026(Vectorworks Newsroom)
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